スウェイバック姿勢とショルダーブリッジ

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以前、「正しい姿勢/代償動作を伴ったショルダーブリッジについて」の記事をご紹介しました。

その際に、「代償動作を伴ったショルダーブリッジは、腰の関節に負担をかけ、痛める可能性がある」ことに触れました。(過去の記事はこちら


今回の記事では、それに加えて「代償動作を伴ったブリッジは、不良姿勢を助長してしまう恐れがある」ことについて、紹介をいたします。

最近では、多くのメディアが不良姿勢を特集するようになりました。その中の代表例として、ケンダルらがパターン化した不良姿勢があります。

上記のような不良姿勢については、ピラティスインストラクターに限らず、ピラティススタジオに通われている方々にも広く知られるようになってきています。

こちらの区分については、アメリカの運動療法の始祖とも言える、ケンダルらが定義したもので、決してピラティス界で発明されたものではありません。

しかし、現在ではNPCT(National Pilates Certificated Teacher)というピラティスの国際資格のテキストにも「ケンダルが定義した不良姿勢例」が掲載されているように、ピラティス界においても広く知られるようになりました。

ジョセフ・ピラティスが「Return to Life」という書籍を発刊したのが1945年、ケンダルが「Manual Muscle Testing」の第1版を発刊したのが1949年。

ピラティスが「身体運動の100年メソッド」を開発したとすれば、ケンダルは「姿勢分析の100年メソッド」を開発したとも言えるでしょう。

決して完璧な姿勢評価ではないものの、簡易的かつ臨床や現場で非常に有効な姿勢分類法といえます。

スウェイバックは、現代人に最も多いパターンの不良姿勢である


不良姿勢の代表例の一つである「スウェイバック姿勢」では、骨盤が前方に迫り出すことによって胸郭(肩甲骨周辺の高さの肋骨や背骨)が後方に変位し、その代償として頭部が前方に迫り出します。

下半身では、骨盤が前方に変位した代償として、「反張膝になりやすい」、「ハムストリングスの筋肉が短くなりやすい」といった特徴があります。

デスクワーク姿勢が長い方がなりやすい姿勢のため、BBにいらっしゃる会員様の不良姿勢の中でも、最も多い不良姿勢です。

背もたれに寄りかかり、上半身が後ろ・骨盤が前に迫り出すようにして座るのが楽だと思う方は、おそらくスウェイバックの傾向がありますので、見に覚えがある方も多いと思います。

もう少し深掘りしていきましょう。

スウェイバックは、腹斜筋群(身体の横側にある腹筋群)において、やや表層にある外腹斜筋が長くなっており、やや深層にある内腹斜筋が短くなっているのが特徴です。

Kendall’s Muscles: Testing and Function with Posture and Painより一部改変


この筋肉のアンバランスが、「お腹ぽっこり」に見える原因の一つになっています。

また、腹斜筋群のアンバランスは、当然ながらゴルフや野球のような回旋を伴うような競技や、バレエやダンスのような速くて正確なスピンを伴うようなパフォーマンスにも悪影響を与えます。


ここまで長々とスウェイバックの特徴や悪影響について触れてきましたが、これからが本題の「スウェイバックとショルダーブリッジの関係性について」です。

冒頭でも紹介した、比較写真。

右側の女性の何がいけないのか、少し角度を変え、体幹部分を垂直にしてみましょう。


以前の記事では、右側のヒップリフトは、腰を反る代償動作により、脊柱管狭窄症や腰椎分離症のような腰を反ると痛みが出る障害につながるリスクがあると述べました。

同時に、上記のような動きの反復は、腰を反る動きとともに、骨盤を前にスライドさせる動きが伴っており、スウェイバック姿勢を強調しています。

解剖用語を交えて解説すると、左側のブリッジは、お尻を上げても肩から膝の部分までが立った状態でのニュートラルを保てている(肩峰・大転子・膝蓋骨が同直線上)のに対し、右側のブリッジは骨盤が前方に変位し、肩峰や膝蓋骨に対して大転子の位置が前に来てしまっています。

大臀筋などのお尻の筋肉をうまく働かせているのではなく、反動で上げているだけのため、「ヒップアップ」のようなエクササイズ効果も乏しいです。

左側のブリッジを繰り返すことで、立位姿勢を良くする効果が期待できるのに対し、右側の場合は、むしろ姿勢を悪化させるリスクがあります。

骨盤を前に突き出ししていることで、まさに「ぽっこりお腹」の姿勢にもなっているのも観察できると思います。

ここで強調したいこととして、「ピラティスで正しい動作を繰り返すことで、姿勢が良くなる」のであって、「ピラティスで姿勢が良くなる」わけではありません。

「ショルダーブリッジ」というムーブメントは、リフォーマーでのエクササイズもありますが、エクササイズのメリットや気をつけるべきポイントを実践者自身が理解していなければ、意味のないものとなるばかりか、むしろ姿勢を悪化させてしまうリスクになり得ます。

マシンピラティスは、「何でもマットピラティスより効果が高い」ということではありません。

ブリッジの場合は、最初はマットピラティスで丁寧に動きを学び、正しいフォームを身につける方が良いケースが多々あります。

また「ピラティスチェアーでのショルダーブリッジを併用する」というアプローチもあります。

チェアーでのショルダーブリッジについては、本ページの最下部のYouTube動画を参照


今後も、「丁寧なマットピラティスの大切さ」についての情報発信を続けていくつもりですが、

マシンピラティス > マットピラティス

という不等式が、常に成り立つわけではありません。

リフォーマーが全てを解決してくれるわけではありません。

スウェイバックについても、ショルダーブリッジについても、皆様に共有したい情報は、まだまだたくさんあります。

今回の記事では、一旦ここまでとしますが、ピラティスやピラティスレッスンの奥深さについて、今後も引き続き書き綴っていけたら幸いです。

ピラティススタジオBB



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ピラティスチェアーでの「アーティキュレーティング・ショルダーブリッジ」は、以下のYouTubeから確認可能です。(3:09頃〜)